カタゴニア

鹿児島市へ移り住もうか。ソウ考えた時期は何度かあった。

けれども。ひょいと霧島へ登れるコノ環境が、今はもう、無くてはならない。

大好きなパン屋、蕎麦屋は、この地の水を使う。山。川。豊。は、鳥羽一郎の弟。

1月27日、日曜の早朝。声を掛けてくれたジンちゃん以外は誰が来るのかも知らぬまま、まだ暗い山道をひとり、えびの高原へ向かう。

前日の夕方、サクラ島大学の久保君からメッセージが届いた。今夜、明日、明後日には、生まれてくるようです。

木々を照らす月明かりが特別に輝いていたので、これはもう今日だろうと予感した。誕生日のご来光を撮れるぞと、喜んだ。

結局、誕生は2日後だったし、ガスる山頂で朝陽は見られず。二重に勘はハズれた。

その上、

写真を撮るために、一人で登れるようになりたい。と考えていたのに、景色の前にある皆の後ろ姿、凍る髪がとても綺麗で。

山頂で分けて頂いた ぜんざいが最高で。

カーディガン姿で凍えた思い出の甑岳(こしきだけ)の思いも寄らぬ美しい姿に目を奪われ。培った遠近感が簡単に崩され。

板を履かなくても、雪の上を駆けられるだけで自分がとても満足することを知り。

何重にも想定外のコトが起きた。

家族が増えればソウイウコトがよくある。

一人ならば、木の前に立ち止まり、長く居たのだろう。僕は三人の後ろを歩き、あ。っと思うと止まり、撮り。雪の上を走って追いつく。

36枚撮りのフィルムを1本撮り終える。交換をしよう。と思ったけれども、手も冷たいし、やめた。

どうせ僕らは、世界のほとんど全てを撮り逃す。

なんちって。

山を下りきり、停めた車が見えたときに、ふと。Musume(5歳7ヶ月)の言う、カタゴニアって響き。光をシカリと発音するところが好きだなと思った。
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心を鬼に

明後日は、おうちで節分だね。朝食時にMusume(5歳7ヶ月)が言う。

うん。節分だね。

幼稚園で作った青鬼のお面をかぶるから、ダディとママが豆を投げてね?そしたら、鬼さんは森の奥へ奥へと逃げてゆくから。

うん。

でね。鬼さんは後で、そーっと帰って来て、豆を食べるの。5つ。

って、Musumeが言う。

そんな鬼さんへ豆を投げるだなんて。森の奥深くへ追いやるだなんて。気が進まない。

というか。昨年も、こちらが赤鬼になればコワイと泣き。交代して僕らが投げればヤメテー!!と泣き叫び、豆まきはほんの数秒で終わった。今年もソウなりそうな気がしている。

鬼の面をアタマに着けたMusumeが嬉しそうに豆を食べる。

初めからソレでいいのにとも思う。

けれども。
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イチゴ紅茶

目が覚め朝7時半、布団をかぶったまま、眠るMusume(5歳6ヶ月)を眺める。

1分もしないうちに、伸びをしながら、寝返りを始めた。かと思うと、転がりきる直前の頭がハタと枕元を向く。

声を出さず息を飲むと、サンタからのプレゼントを掴み、抱え、妻の居るであろうキッチンを目指す。

早歩き。なのに、寝室の引戸を丁寧に閉めて行った。

Musumeらしいその一連の行動、光景が、日中、何度も浮かぶ。

前々日の あそび発表会。

前日の クリスマス会。

ケーキ、食事、プレゼント、ピアノ、踊り。そのほとんどが妻とMusumeの地道な準備で成り立つ。クリスマスに限ったことではないけれども、この家の出来事は彼女たちが彩ってくれている。

あとは、サンタとか、親類とか、ジュン君とか、ナナちゃんとか。

圧倒的に貰ってばかりだし、喜びを味わうだけではダメだなと感じはするのだけれども、同じように気の利いた、手の込んだことは出来る気がしない。

別のカタチで頑張ろうと思う。

朝食前、サンタのくれた木のティーポットに早速、野いちご(同じく木製)がハマった。どうにも取り出せない。ポットの口から頭を出した野いちごでフタも閉まらない。

そのストロベリーティー専用ポットに記憶が反応する。

野球盤の消える魔球のところにハマった硬貨。改造が失敗し、機能もデザインも残念な状態の自転車、ラジコン。中身を見るだけのはずがソノ機能を失うことになった時計、ビデオデッキ。ウィリー走行のために壊れたバイクと割れて赤く染まった僕のアタマ。夢のホットミルク生成機になるはずがコタツの上で牛乳を派手に噴出したのちに臭くて使えなくなってしまった電気ポット。挙げたらキリがない思い出が次々と浮かぶ。

朝は時間が無くそのまま出掛け、夕食後に再度、ポットへ挑戦。

どうにも外れなくて、結局、ワインオープナーで引っこ抜いた。

こんなにすぐ野いちごに穴が開くとは、サンタクロースも想像しなかったろう。けど、聞いたら喜ぶと思う。

美味しい紅茶を作ろうと試みた結果なのだから。
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1時間後

ダンス、合唱、合奏。あそび発表会へ向け、Musume(5歳6ヶ月)が毎日練習に励んでいる。

春から、幼稚園バスの中で泣くMusumeを何度見送ったろう。

お友達と話をした。バスから教室まで行けた。

少しのことに喜び、胸を撫で下ろす。

越えては現れる課題に、食欲を無くしたり、遊びさえ手に付かなかったり。体調を崩しがちな時期もあった。

その彼女が、他パートのメロディオンや、男の子たちのお遊戯までも憶えてしまうくらい意欲的に、幼稚園へ通っている(朝の寒さに涙ぐむことはあるのだけれども)。

工作、ままごと、お話作り、ピアノ、歌、踊り、オシャレ。家でも意欲に満ち、ごはんも今までに無いほどたくさん食べる。

この8ヶ月を思うと。

あふれる元気に触れられる。ただそれだけでホントウに嬉しい。

その彼女が舞台で、踊り、歌い、鉄琴をたたく。

2012年12月22日。

人類滅亡の日だと騒がれた日の、次の日。

大好きな人たちが東京へ旅立ち、大切な人たちの結婚と別れが数多くあった1年の最終盤、繰り返すように地道に、けれども着実に積み重ねたチカラを披露する。

あと1時間後。
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クリスマスの作り方

昨年に引き続き、妻がMusume(5歳6ヶ月)のためにアドベント・カレンダーを準備した。

今年は、数字の書かれた手作りの小さな紙袋がクリスマス・ツリーにぶらさがっている。Musumeは、朝起きると今日の日付を見つけ、ツリーから外し、鼻歌まじりに中のお菓子を確かめ、喜ぶ。

チョコレートだったり、クッキーだったりは、幼稚園から帰ったあとに食べているらしい。朝は、クローゼットの上段にある自分の家へ仕舞う。

紙袋を作る。数字を書く。お菓子を入れる。ツリーへぶらさげる。

まっすぐに彼女へ向けられたソノ手間が、毎日を、朝を、明るくする。その優しさは、クリスマスが来るたびに思い出され。彼女を通してたぶん、世界へ伝わってゆく。

週末、思いがけず、そのツリーに新たな飾りが加わった。

照国神社近くのカフェ Mono. で作られたクッキーのオーナメント。これまた、見るからに愛情がこもっていて。カタチも可愛いし、いい色で輝いている。

世界へ作用する方法というのは、さまざまある。

誰かの思い出というのは、こうして彩られてゆくのだな。Musumeのクリスマスを見ていて思った。

オーナメントクッキー
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